アンドロイドは深センで電子城の夢を見るか?
深セン視察報告

2025年9月某日、香港にてお仕事があり、幸い自由になる時間ができた。「深センに行け」と俺のゴーストが囁いたので、突発的に深センに向かった。
そもそも香港から深センは隣同士と言っても良いくらい近く、地下鉄を利用すれば45分程度、もしも高速鉄道を利用すれば15分という行きやすさである。以前はなにもない普通の中国の町だったが最近は高層ビルもバンバン建ち、日本に進出している中国企業の拠点でもある。一体どんな街なのか、肌で感じたい、ということだ。更に深センといえば電気製品。深センと聞けば、アップルの名前が頭に浮かぶ。調べてみると電気街が有名らしい。これは所謂中国製の手持ちゲーム機やらコピー製品などを売っているアヤシイ電気店に遭遇できるかもしれない!という期待を胸に、浮足立ちながら向かったのである。とはいえ、中国。香港も中国なのだけど、メインランドと言われる本当の中国に行くのは初めて。googleが使えない位の情報は知っていたので、地図アプリや翻訳アプリなどなど用意してから向かった。のだがそれでは足りなく、大失敗をやらかすことになるのだが、、、。



通関では書類の記入が少し面倒で、テーブルも少ないので外国人旅行者は並ぶことになる。さらに指紋の登録もスキャナーの付いた機械で行わなければならない。端末が複数置いてあるが、やり方がわかりにくかったり、壊れていてエラーになってしまったり、なんだか色々面倒で時間がかかるが、そこは我慢して従い、手続きを行った。「いつ帰るのか?」との質問に、「今日」と答えたが、ちょっと不思議な顔をされた。日帰りで香港から来る旅行者は少ないのかもしれない。指紋も取られ、バッチリ顔も登録されたので、これで中国の全体監視システムに認識されるようになったのだ、とジョージ・オーウェルの影がつぶやいた。ビッグブラザーの目から逃れることはできなくなったのだと。
さて通関を通り順風満帆。地下鉄に乗って電気街に向かうぞ、と。アレ、スマホが圏外だ。香港で使えていたESIMはメインランド中国では使えなかった。同じ中国なのに、、、。スマホが繋がらなければ地図も翻訳ソフトも使えない。見知らぬ地でインターネットなしで大丈夫なのか、とそのまま回れ右して香港に戻ろうとも思ったが、せっかく来たのだし二度と来ることもないのだと思い、ネットなしで深センに侵入し生き延びて帰るというミッションに変更した。現代においてはちょっとした冒険ではないか。というか一昔前はスマホなんてないしなんとかなってたじゃん。まずは軍資金を手に入れるべく、駅にあった外貨両替にて香港ドルを中国元に両替。これでとりあえずなんとかなる。ここからは手探りでの旅程だ。幸い行きたい場所の地図はスクショしていた。Google MAPアプリ頼りですべて乗り切ろうと思っていたがgoogoleが使えないということを知ったので、スクショしておいたのだ。地下鉄に乗るべく、看板を見ながら向かう。グルグルと少し迷ったが、目当ての地下鉄改札に着いた。切符の買い方がわからない。英語の説明などあるわけもない。発券機のような漢字が書いてある機械と格闘したが、せっかく両替した紙幣も大きすぎて受け付けないので敗北。いきなり地下鉄に乗れないせいでゲームオーバーかと思ったが、AliPayのバーコード決済がなんとか使えたので切符が買えた。これで目的地までは行けそうだ。

地下鉄の改札に入るには、金属探知機をくぐる必要があり、警察官が常駐している。物々しい雰囲気だが地元の人たちは涼しい顔で通り過ぎていく。飲み物は全てチェックされる。地下鉄車内にも警官がおり、パトロールしている。内心ジロジロ見られている気がするが、気のせいだと思っていたら、ブラブラと次の車両に歩き去った。


地下鉄社内は綺麗で近代的な感じ。モニターでは深センという都市が発展し続け宇宙に行っちゃう位の映像が流れていた。深センリングワールドというイメージの映像だ。夢がデカいな、君たち。
地下鉄に乗って目当ての駅、華強北地に着いた。駅を出るとすぐにアップルのマークがある。スマホ修理屋さんだ。それだよそれ!期待していた通りでニヤニヤしてしまう気持ちの悪い外国人となった。

さて地上に出て電気街へと向かうが、もちろんナビなしなので迷う。複数のそれっぽいビルに入るがお目当ての場所とは違う。だが、すごい。電子市場(电子市场)と書いてあるビルは1ブロックあるかという大きさで、5階建ての中に小さな電子部品を売っている店が数え切れないくらいひしめき合っている。





秋葉原のガード下の電気部品屋さんが1ブロック全て埋め尽くし、それが5階分あると想像してみてください。そして、さらにその巨大なビルが何個もあって、その街を埋め尽くしていると思ってください。それが深センの電気街。ワクワクするなあ、霧亥。







メガビルディングの階層で迷い続けているのに疲れ、外に出た。街路図が示す、左側のオレンジと紫は全て電子部品屋のひしめく巨大なビル。水色の右側部分は違うようだ。とにかく規模がでかい。

さて、ということでやっと、、、やっとお目当てのビルに辿り着いた、、、ハァハァハァ。その名もSEG Electronics Market。惜しい。あと一文字でSEGA!セガ好きな友達への土産話にするには最適だろうと思って選んだ目的地だ。しかもここは部品だけではなく、期待しているゲーム機も売っているらしい。早速潜入だ。

1階の入口付近には最近流行りのものが多いようだ。DJIのドローンが2万6千円で売られている。日本で確認すると6万円程度。産地が深センとなっているので産地直売で安いのか。

スマートグラスが3,000円。これは最も安いものを手にとっていて、もっと機能がついた高いものもあった。




個人的にレトロゲームができる携帯ゲーム機が買いたかったので、これ良さそうだなあ~と思いつつ見ていると、店員の女の子が中国語で話しかけてくる。もちろん英語は通じない。翻訳アプリを店員さんが立ち上げてくれて、会話ができた。価格は3,000円ほど。しかも今買えばもう少し値下げすると言われた。値段は交渉次第だ。まだまだ1件目、相場感もわからないので一度グルっと見回ってみることにした。


大体どこのお店も売っている商品は似ている。あとは店員さんの匙加減で価格が決まる。場所によっては大分高い金額を言ってくる店もあったので、偵察必須である。

数階層歩き回り、ゲーム屋さんを見回った結果、最終的にこれを購入。SJGAMのM18。8bitゲーム機からPSPまでエミュで動く。大体5千円だ。店員さんの対応がよく、値下げもしてくれた。



(左)中古のMACやWINが並ぶ中、グラボがたくさん売られていた。
(中)電脳も組みますよ、と。PC販売の階層にて
(右)電脳を組んでいる。この階層はまあまあ忙しそうな人もいた。電脳を組む技師たちだ。他店では電脳技師たちが数人列になってせっせと働く後で、暇そうにしている店員もいる。カーストが上なのだろう。ここも階級社会である。



重ねられた基盤。
子供が喜びそうな玩具も売っている。車がロボットに変形する玩具は、中国の伝統芸のロボデザイン。ざっくりした変形だよね。車折って立たせて顔つけただけ、みたいな。


あっという間に時間は経ち、心地よい疲労感と、携帯ゲーム機を胸に帰途につく。






展望台から街を一望して帰ろうと思って来てみた。平安金融中心というオフィスビル。受付でチケットを買おうとしたら4,000円。短時間でチラッと観て帰ろうと思ってたので断念。

気がついたら昼ご飯も食べずに夕方まで歩き続けた。帰路に美味しそうなお店を見つけてテイクアウト。指差しで購入。中身は細切りポテトで美味しかった。こういう食品関係の物価は香港よりも格段に低いのでありがたい。
たまたまニュースでは中国の閲兵式が流れ続け、日本からの独立80周年!と大々的に報道されていた時期で、中国にフラフラと行って大丈夫か、とも思ったが、なんの問題もなく、というか深センはそんな政治的なお祭りはお構い無しに商業活動に勤しみ、現代世界の電子機器に対する欲望に応え続けていた。幼い頃から秋葉原に通い続けていた自分としては、あのアヤシク混沌とした電子部品屋さんのひしめく以前の秋葉原のドロドロとしたテクノロジーに対する欲望のパワーが、ノホホ~ンとしている間に深センに光の速さで追い抜かれて、数十倍の規模で電子の夢が紡がれている様を目にすることができた。リドリー・スコットが思い描いた近未来の街は中国で現実化し、香港でビジュアル化されていた。もちろんそこにはビッグブラザーという影が潜んでいるのだが。欲望が街を作り、経済活動を駆動していくのだ。

最後に、タイトルのアンドロイドについて。随分前に早川書房1Fのカフェクリスティにて「PKD酒場」という期間限定のバーに訪れたことがある。そこで当然ヴォイクトカンプフテストを受けたわけだが、結果は当然レプリカントだった。というわけで、アンドロイドが深センに行ったというタイトルなのである。電子羊の夢とはAGIなのか?80年代のサイバーパンクはドロドロと混沌としていてメカニカルで、AIといえばサイバースペースのロアのように噂で囁かれる神話のような世界観だった。現実の未来では膨大なデータをチェリーピックする九官鳥がもてはやされ、手で触れる物質的なデバイスは時代遅れの感もある。だが所詮人間はミートなのだ。ゼロイチでは消化しきれない物質的な欲望が国を動かし、世界を席巻している。欲望に応えていくか、それを抑圧するのか。それが日本と中国の発展の違いのように感じた。抑圧の度合いは中国の方が大きい。だが、それに従う従順さは中国人は日本人よりも少ないのかもしれない。それはパワーであるとも言えるし、暴走する混沌であるとも言える。生命は混沌の中から産まれたのだが、、、。
了























兄弟!今はなき秋葉原の電脳街を想わせる雰囲気を最高潮に味わえる「深セン」のレポート!ありがとう!!
昔の電脳街秋葉原の熱狂と比べるとちょっと熱気が冷めた感じなのは今やネット社会でフィジカルなものに触れる機会が少なくなった現在だからかな?
シリコンバレーが憧れた秋葉原は今はちょっと違う風景になったけど、隣国のちょっと浮ついた熱気が感じられるのは面白いね!EVが自転車より多いカオスな街の雰囲気も独特で笑ってしまうし、文章だけでもショートトリップしてしまう。
「電池の爆発に気をつけろ」っていうのもメチャクチャでカオスだ!
「空飛ぶ車」がうんたらとか行ってる万博よりエキサイティングだったんじゃないかな!?
また面白いレポートあったら待ってます!!
香港は繁体後で深センは簡体語かと思うのですが言葉は大丈夫だったのでしょうか?
あと、一応他国への入国みたいになるんですね
電子部品の城!
たまんなくワクワクしますね!!
著作権の問題はともかく中国人の探究心、スピードは本当にすごいなと思います
また、こういうたたき上げ的な技術をどんどん上げていくんですよね
ヴォイクトカンプフテストを受けられるバーがあるなんて!
ぜひ行ってみたいです
奇しくもデッカードブラスターのキット化、ポリススピナーの新キットが発表された今、ブレードランナー来てますねー
言葉は完全にチンプンカンプンでした。ですが漢字なのでなんとなく意味が分かる感じです。英語で話しかけてもほとんど通じませんし。スマホなしでのコミュニケーションはキツかったですね。
あとブレードランナーのキット化!知りませんでした!買わなきゃー!